elude丸

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映画「君の名は。」ストーリーの奥行きまで推察したくなる良作

      2017/05/12


組紐が紡ぐ二人の少年少女の記憶ではなく感情の物語

映画の日。ということもあり公開後から大いに話題になっている
新海誠監督、「君の名は。」を鑑賞してきました。

いや、ホント。大ヒットになっているには訳がある。
というのも頷けるような作品であり、見終わった後には
清々しさと共に、心の奥底が暖かくなるそんな良い作品だったと言える。
個人的にはいろいろな人にオススメしてもほぼほぼ楽しんでもらえる。
そんな良作であると自負できる。

kiminona
東宝 ©2016「君の名は。」製作委員会

感想へと入る前に「ネタバレ」に関して
途中までは「ネタバレ」を含まないように感想を書かせて頂いている。
なので「君の名は。」がどんな作品が気になって見に来た。という人はそこまで読んでもらって
すでに視聴した後だ。という人に向けて後半で私なりの考察を述べている。
ネタバレ注意」という形で注意を呼びかけますので
注意を行った上で楽しんで下さい。

設定としてはありふれているが新海誠さんらしさが光る

物語の構成としてはよくある設定が利用されている。
それが彼と彼女の精神が突然入れ替わり、奇妙な入れ替わり生活が始まる。
彼の名は「立花瀧(タチバナ タキ)」、彼女の名は「宮水三葉(みやみず みつは)」
しかし、使い古された入れ替わり生活だが、そこには一捻りが加えられていて
その展開には中盤まで本当に騙されていた。
普通の作品なら、一捻りを知った所を物語の佳境へと持ってくるが
そこからさらに話を広げる手腕には賛辞を贈りたい。
そして、何よりも二人の若者が、お互いを求め、お互いに巡りあうために
駆け抜ける姿に観客一同は引き込まれ、感情移入すると共に
彼と彼女の一途な想いに涙が滲んでくる。

しかし、新海誠という監督らしさが出ているのは
美しく描き込まれた美麗な風景をワンカットで表現する映像美
遠くから望む都会の風景を切り取るだけでなく、そこに早送りさせるような表現を加え
ものの数秒で昼から夜へと移ろう都市の風景に、忙しなく空を翔ける雲。
この映像美だけでもため息がでるほど美しい。

特に今作ではこの風景画を効果的に使っている。
というのも、場面展開や時間経過を美麗な風景画を使って演出している。
そんな演出が美しく魅入る映像美のため、場面展開や時間経過にすら魅入ってしまう。
特にこういう場面展開や時間経過の演出というのは、映画の基本として当然のように使われる。
ドラマなどの実写の場合には、風景を撮ったりすることで簡単にできるが
アニメとなると、それを描くにもコストが掛かってしまうため。基本嫌煙される。
なので、簡単な背景に。夕暮れなら茜色。朝なら眩い陽光。などで彩った一枚絵を使う。
そんな場面展開や時間経過のためだけにわざわざあんな演出などまず放り込まない。
そういう意味では新海誠さんらしい演出が光っている。と言える。

ストーリーの展開としては本当に面白くできている。
序盤は女性が彼の体に、男性が彼女の体に。入ったことによる戸惑いや
周囲に知られないためにどのように取り繕うのか。などを面白おかしく展開し
コメディータッチに進むが、後半から物語は加速度的にシリアスな流れへと展開していく。
ストーリー展開は「緩急」というのはコンテンツの基本。観客を落ち着かせるだけでなく
時にはストレスや興奮するシーンを持ってきて興味を引き込み、また落ち着かせる。
それらを繰り返すことで観客をコンテンツの世界観へと惹き込むことが面白いコンテンツの条件。
緩急の流れを繰り返すことで観客はより楽しくコンテンツを見ることができる。
その「緩急」の緩として使っていたのが、上で触れた美麗な風景画
場面展開や時間経過だけでなく、観客の気持ちをフラットにさせる意味でも使っていたように思える。
そういう意味でも上手く機能させていたと言える。

劇中歌が効果的に使われ感情移入できる。声優陣はなかなかどうして名演技

今作では効果的に劇中歌が展開されており、本当に視聴者の感情を盛り上げてくれる。
音楽は「RADWIMPS」が担当しており劇中の
シーンにあった劇中歌を彩ることで感情が歌に乗り、より気持ちよく感情移入できた。

声優は「立花瀧」役を神木隆之介さんが担当し
「宮水三葉」役を上白石萌音さんが担当している。
俳優の声優起用ということで、個人的には期待をしていなかったのだが。
何とも期待を裏切る好演で違和感なく、そのキャラクターになりきっている。
特に後半で、手ざるで掬った水のように彼女の名前が記憶からこぼれ落ちていく瞬間を
哀しみと共に自分の気持ちを吐露する感情の爆発は気持ちが良く伝わり感動を呼ぶ。
その他にも心が入れ替わる部分では、男性なのに女性らしい雰囲気を醸す演出も良かった。

正直、全体的に丁寧に作られており、企画段階からシナリオ脚本を作るまで
練りに練って作られた作品だろうと見ていて感じられた。
そのため、見終わった後も。あそこでは、あの行動は。とかを考えたくなる良作で
深くまで推察し、考察することができる映画だと個人的には感じている。
オススメしたい一作であると評しておく。

さて、あまり個人的には作品に踏み込んだところまで書きたくはないのだが
今作はうえでも書いたように、推察や考察を楽しめる余地があり
それだけ興味深く惹き込まれる作品でもある。

そこでココからは「ネタバレ」を含んだ記述が始まる。
視聴していない。今後視聴するつもりだ。という人はお手数ではあるが
視聴した後に、何が書いてあるのかを読んでいただければと思う。

ここから先は「ネタバレを含む内容」になっているので
閲覧する際にはご注意を!

ネタバレを含む可能性のある深読み「組紐」が結ぶ二人の運命

物語のキーパーソンとして登場するのは「組紐」と呼ばれるもので
幾つもの糸を撚って形成し、一つの組紐とする伝統工芸品で二人の運命を結ぶものとなっている。
そんな組紐だが、物語の後半で瀧が持っていることに触れられ
誰からもらったかわからない。という風に彼が独白しているが
本当に序盤から持っていたのか何とも見返したくなる設定をしている。
物語の後半にてこの組紐を持っている意味が大変深い意味を持っており
彼と彼女の関係を紐付けており、この組紐のおかげで劇的な展開が起きている。

しかし、この組紐を使っての「三葉」の過去に触れる部分の演出は
すごく凝っており興味深い。どうして父親と住んでいないのか、どうして母親はいないのか。
それを視聴者と同じように観客的に見せている。

他にも気になる部分がある。
映画が始まった瞬間、導入部分から出てくるのは「隕石落下」のシーンからだ。
映画を見ていくと隕石落下の意味がよく分かり、最初の隕石落下シーンの意味を知る。
が、この冒頭部分の隕石落下シーンというのは、いつの話だろうか?
瀧と三葉が入れ替わった後、助けることが出来なかった時だろうか?
個人的には違うと推察している。というのも、この映画の中に時間軸は3つあるのではと推察をしている。

1つは瀧と三葉が入れ替わった時間軸。1つは瀧が三葉を救った時間軸
そして、もう1つが瀧も三葉も入れ替わらず隕石が落下した時間軸
という3つの時間軸がこの映画にはあったように推察を持っている。

冒頭の隕石落下シーンというのは、あれだけで終わり、詳しく描かれていない。
それが瀧と三葉が入れ替わらなかった時間軸。元の時間軸ということもできるかもしれない。
元の時間軸で大惨事が発生した事によって超常的な力が働き、瀧と三葉の入れ替わりが発生した。と見ている。
つまり、物語としては冒頭の隕石落下シーンを回避するために物語が紡がれていく。
物語として描かれなかった、真の物語の起点だったのでは、と推察している。

個人的に今作で1番グッと来たのは、言うまでもないだろうが最後の盛り上がり。
ご神体の側にて二人が出会い、隕石落下から住民たちを退避させようと奮闘する中
瀧の名前が思い出せないことに感情と心をバラバラにしながらも走り続ける三葉。
そんな時、段差につまづき大きく転げる三葉が見たのは手に書かれている「瀧からの告白」

名前も思い出せないのに、心の底から燃える愛おしさだけは確かに三葉の心の中にある。
なぜなら彼女自身も瀧に対して恋を抱いており、瀧と会えたことが嬉しくて
早鐘のように鳴り響く自分の心臓が彼への思いをさらに強めてくれる。
なのに彼の名前を思い出せない
そして、彼の気持ちもわからない。そんな時に見た「瀧からの告白」

自分の中で巻き起こっている感情の落とし場所が分かったこと
そして瀧も自分のことを好いているのだと知れたことの嬉しさ。
それだけでどこまでも行けるほど活力がみなぎってくる。
彼女の体を勇気が包み、住民の退避準備を成功させる結果につながった。

正直、ここの展開にはヤラれた。
普通に「タキ」と書かれていると視聴の多くが思っていたはず。
なのにここで告白するとは。でも、物語の展開としては「告白」でよかった
いや、告白だったからこそ心が折れそうで、諦めてしまいそうだった
三葉に勇気を与えることができたのだと思える。

そして、そこからエピローグへと繋がる。
お互いに成長しても、あの時の感情がどこかで残り、何かを求めて生活を続けている。
そんな所でようやく三葉は瀧にすれ違い、息を切らせて路地裏を走る。
この場面、基本的には瀧の視点で物語が進行する。が、三葉も同じく路地裏を走っていた。
そして、お互いが路地裏にて出会う。が、ここで声を掛けたのは瀧で三葉から声は掛けなかった。

では、どうして三葉は声を掛けられなかったのだろうか?
実は過去に三葉が東京へと瀧を探しに行った時
見付けることに成功したが、瀧は三葉のことを知らず冷たく対応されてしまった苦い経験がある。
結果、同じことをしてしまう。
そんな想いがあったからこそ彼女から声を掛けることができなかったのではないだろうか。

記憶というものは確かに消えてしまうのかもしれない。
人は生活する上で、様々なことを記憶し経験して整理していく。
その間で記憶は輪郭がおぼろげになり、曖昧になっていく。
だが、その時に抱えてきた「感情」というものまでは薄れることはない。
そんなテーマ性がこの映画には含まれているように思えてならない。

今一度見返して他にも気づかなかったところがないか
正直、大変に興味深い良い作品であった。

そんな良作だった映画「君の名は。」の気になる感想を紹介

さて大変楽しめた「君の名は。」だが
いくつかのサイトでも感想をアップされている方がいるので
幾つか紹介したいと思う。

「君の名は。」の重要な疑問(ネタバレ)
【映画感想】君の名は。
【感想】映画「君の名は。」に抱いた違和感の正体【ネタバレ】

さて、そんな感想がアップされている中でも次の感想は本当に興味深い。
『君の名は。』は、何故ここまでヒットしたのだろうか

感想というのはその人、個人が感じたことであり
それら感想に関して何かツッコんだりするつもりはない。
興味深い作品であり、いろいろな人の見方ができる作品なので
興味があれば他の人の意見も読んでみてはどうだろうか。

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