elude丸

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書籍「中野京子と読み解く 運命の絵」作家や世相に隠された運命を絵画とともに紐解く

      2017/04/23


書籍「中野京子と読み解く 運命の絵」で明かされる作家や世相の運命

今回は私が唯一、シリーズを通して購入させて頂いている
著者「中野京子」さんの新書「中野京子と読み解く 運命の絵」の感想を綴らせて頂きます。
ISBN:978-4-16-390616-4

以前に刊行された中野京子さんの「新 怖い絵」に関しても
感想を綴らせて頂いているので、興味のある方はどうぞ。

書籍「新 怖い絵」絵画の裏に潜む恐怖を暴き知らしめてくれる一冊

さてさて、今回の書籍は以前にあったような「怖い」などの
シリーズから少し離れて「運命」という括りで
題材となる絵画にその工程や被写体などに合わせて
命運などを事細かく、中野先生らしく迫られています。

まあ、読む前からわかっていたことですが
やはり「怖い絵」から比べてしまうと
インパクトというものには欠けてしまう部分も少なくありません。
私の個人的な感想ではありますが。

言うまでもありませんが「怖い絵」には怖い理由が見え隠れしています。
どうして怖くなったのか、どうしてほの暗い絵を描いてしまったのか、などなど
ほの暗く這いよる怖さ、時には直接に刃を突き立てられる怖さを伝わってくるインパクトがありました。

ですが、幅広い「運命」という題材になったことで
歴史背景や世相などを合わせたインパクトというものは、弱くなったように感じられるわけです。

ですが、あいも変わらずその絵画が制作された時代背景であったり
作者の功績などをしっかりと調べられており、判りやすく紹介されています。
しっかりと世界情勢や作家が生活していた地域などを踏まえて
細かく情報を集めてまとめられており絵画という文化に触れるには良い本だと言えます。

そういうことができるのも、向こうの文化に明るく
しっかりと歴史感などを詳しく研究されているからなのでしょう。

自分で自分の作品のバージョン違いを作る運命

個人的に驚かされたのは有名な作品でもある
ムンク作「叫び」という絵画についてです。

私が知っていた話では、絵の中心にいる人物に対する悪口を奥の人物達がしているため
それを聞きたくないと耳を抑えて叫んでいる所、というものでした。

ですが、中野先生の話では異なるもので
しっかりとそこには時代背景であったり、その時に起こった気象現象などを踏まえてしっかりと語られており。

そして、何より驚かされたのが、その後も何パターンか似たような構図の作品を
作家自らが制作しているということです。
いろいろな画材を使って、少しずつ異なるアレンジを加えながら制作され続けているそうです。

なんというか、そういうのを見ていると
安室奈美恵さんが歌う「CAN YOU CELEBRATE?」を様々な楽器で
アレンジして演奏するアレに近い感じがしてくるのは私だけでしょうか。
和風カフェなどで流れている「CAN YOU CELEBRATE? by お琴バージョン」のような。

The虎舞竜というバンドが「ロード」を何パターンも歌詞を変えて作ろうとしていたように。

なんというか、「噛(しが)んでいる」ような印象を受けてしまいます。
「しがむ」というのは、スルメのように長々と口の中で
くちゃくちゃと味がなくなった後も楽しむこと。みっともないという印象が強いことば。

まあ、私のような一般市民でも知っているムンクという作家さんの代表作であり
それ以外を知らないという、作家さんでもあるわけですから、しがみたくなるのも頷けるが……。

見聞きしたことがある絵画の裏側を事細かに紹介してくれる良書

そういう裏面などを垣間見ることができるのも中野先生の書籍が好きなところです。

絵画だけに焦点を当てるのではなく、そこから広く、そして俯瞰に視点を広げて
作家本人であったり、世界情勢であったり。
さまざまな関わりを見出しつつ、興味深く絵画を紹介してくれるのです。

絵画というこれまでほぼほぼ学校の「美術」という教科書でしか見たことないような私でも
(それも入学式や新学期に渡されたその日に見なくなる教科書の一つ)
絵画の奥深い世界観を楽しめるように導いてくれるのです。

別に絵画の見方などについての小難しい作法やマナーなどを
詳しく紹介している訳ではありません。
「絵画」と長年人間が積み上げ、そして積み重ねてきた表現方法について
その裏側にある作家の苦悩であったり、世界情勢、歴史感などをひっくるめ
絵画の裏側に隠されたストーリーを我々に分かりやすく紹介してくれるのです。

絵画を眺めながら、委ねて愉しめば良いのだと教えてくれています。

インパクトが欲しい場合には「怖い絵」シリーズがオススメですが
それでも「運命」という切り口でも十二分に楽しめる作品。
絵画という日頃触れることのない世界の裏側を垣間見ることができます!

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